もみじ

うちの猫の名前だ。
もう10才になる。

段ボール箱に入れられて道ばたに捨てられていたのだ。
姉妹がいたのだけれど、箱の近くで車にひかれて死んでいた。
箱の中で鳴いていた猫を、見るに見かねて、かみさんが連れ帰ったのだ。

最初は目もちゃんと開かないくらい小さな子猫だった。
あまりにも小さいので、ちゃんと育つか心配だったが、
何と、家の飼い犬(ナナ)が母性本能に目覚め、自分のこどものようにお乳を与えて育てたのだ。
最初のうちは、みんなで世話をしていたけれど、結局は、猫があまりスキでなかったワタシが世話をする事になってしまった。

もみじは、拾われたときから犬に育てられたので、自分が猫だとはあまり自覚していないかも知れない。
時々、モグラを捕まえて持ってきて、玄関先に自慢げに放置してあることがある。
いつも、親代わりのナナと仲良くくっついて眠っていた。犬と猫なのにとても仲良しだった。
もう、育ての犬ナナは死んでしまったので、最近は寂しいのか、前よりも良く甘えてくるようになった。

昼間は、日の当たるお気に入りの場所で寝ている事が多く、お腹が減ると玄関のドアやテラスの窓に来て、餌をねだるように鳴くのだ。
10年も世話をしていれば、自然と情が移ってしまうもので、猫が嫌いだったワタシも猫の気持ちが少しはわかるようになった。
動物は正直と言うか、そのままありのままなので、ホッとするし癒される。