静かな時間

一日の仕事を終えた安堵感。
日暮れから急に冷えてきた屋外と対照的に、ほどよく暖められた室内の心地よさ。
「ふー」っと、ため息をつきながら、お気に入りの木の椅子に深々と腰を下し、
肘掛けに両手を載せて全身を椅子に預ける。
 
古い柱時計の音が静かに響く部屋の片隅、白い漆喰の壁を背にして、スエーデン製の小さな石油ストーブが、ほのかなブルーの炎でゆらゆらと燃えている。
ストーブの上にでんと置かれた白い琺瑯のやかんの蓋が、時折、カチカチと音をたて白い湯気をはき出している。
ほんわりと暖められた空間に、挽きたてのコーヒーの香りが漂い、ステレオからやさしいピアノの曲がゆっくりと流れてくる。
 
丁寧に分解して、きっちりとメンテナンスを施した年代物の石油ストーブに灯った、青い炎を観ながら、大きめのマグカップで熱いコーヒーを飲む。
ほろ苦い香りと、ほのかな甘みと酸味が身体中に浸透していく。ホッとして、思わずにやけてしまう。
一人だけの静かな時間がゆっくりと流れていく・・・・。
 
ちょいと、映画に出てくる一場面の様な雰囲気で、マッタリとした時間を過ごしてみた。
普段は何もしないで、そんなに長い時間じっとしていることなんて出来ないのだけれど、炎を見つめていると不思議と飽きないものだ。
 
寒い季節のチョットした楽しみかも知れない。